start of AKUNOMICHI 後編


リンアン:ri       秋月ゆえ
レオン:re     月城鏡夜
サリー:sa     雪城あゆむ

トレニア:to       KAZMA
アイリス:ai     和泉美鈴
城の兵士A:A        金次
城の兵士B:B    謎の使者

 


 



【丘】

sa01 : 次は何します?王女。

ri01 : んーと、思いっきり遊びたいわ。お洋服汚してみたいの!!

re01 : ちょ、それは流石にダメですよ、王女!!
       外で遊んだ事バレたら大変なんでしょう?

ri02 : もう、レオンってばいつも五月蠅い教育係みたいよ。
       将来、禿げるんじゃない?

re02 : 禿げないし、俺は普通に心配してるだけ!

sa02 : あはは、レオンはお堅いからねー。
       でも王女、そのお洋服可愛いから汚すのもったいないですよ?

ri03 : そう?こんなのだったらお部屋に一杯あるけど…
       サリ―がそう言うなら違う遊びにしましょうか。

re03 : あれ、俺の意見は無視?

 


ai01 : 皆、元気ねぇ。

to01 : そうだねぇ。それより、良いのかい?
       王女と一緒に君まで理由もないのにお城から出ちゃって。

ai02 : あ、大丈夫よ。お仕事ないもの。

to02 : 結構暇なんだ?

ai03 : そんなことないわよ。今は戦も流行り病もないから出番がないってだけ。

to03 : ふーん。

ai04 : お兄ちゃんこそ、良いの?

to04 : 何が?

ai05 : レオンくん。
       王女と本当は血が繋がってる、って知らないんでしょ?

to05 : …それ、城の外の人間に言っていいの?トップシークレットなんでしょ?(くすくすと冗談っぽく笑いながら)

ai06 : そのトップシークレットを知ってるからレオンくんの家庭教師なんでしょ、お兄ちゃん。

to06 : あはは、まぁね。

ai07 : 本当は王女とレオンくんが近付かないように監視する役なのに…

to07 : 仕方ないだろう?あの子たちがこうなることを望んだんだから。
       ボクには止められないなぁー。

ai08 : まぁ、呑気ね。
       …でも、あんなに楽しそうな三人見たら仕方ないわね。

to08 : ねぇ、アイリス…ボクは、言うべきかな?

ai09 : え?

to09 : レオンに、彼の本当の名前を。

ai10 : 本当の名前…

to10 : レオン=ミラー=アシュビッツ。

ai11 : …お兄ちゃんが言うべきだと思ったんなら言うべきだわ。
       でも、お兄ちゃんがそうじゃないって思ったんならそうしないべきね。

to11 : アイリス…君は賢い分、答えが難しいね。

ai12 : お兄ちゃんは頭良いけど、残念よね。

to12 : ちょっとそれどういうこと?

ai13 : そのままの意味よ?
       さて、と。王女ー、そろそろお城に戻りますよー。

ri04 : えー、まだ遊びたいわ、アイリス!

ai14 : そろそろお勉強の先生がお部屋にいらっしゃるお時間ですから、戻りましょう?

ri05 : …嫌。

to13 : それじゃあ、レオン、サリ―、ボク達も帰ってお勉強の時間にしようか。

sa03 : えー。

ri06 : えー。

re04 : えー。

ai15 : あらあら、仲良しさんね、皆。

ri07 : …仕方ないわね、それじゃあ、また明日来るわ!

sa04 : 待ってますね、王女!!

ai16 : それじゃあ、サリ―ちゃん、レオンくん、またね。

re05 : アイリスさん、さようなら。

sa05 : ばいばーい!

 

OP


ri08 : start of AKUNOMICHI

re06 : 後編

 

【トレニア宅】


sa06 : トレニア先生、行った?

re07 : うん、行った。

sa07 : はー、つっかれたー!!
       トレニア先生ったら顔に似合わずスパルタなんだもん。

re08 : 全くだな。もう学校は休みだって言うのに毎日勉強、勉強、だもんなー。
       気が狂いそう。

sa08 : それより、レオン!!
       明日は何して遊ぶ?

re09 : 王女が遊びたいようにすれば良いんじゃないか?

sa09 : もう…主張しない男は嫌われるよ?

re10 : 協調性があるって言ってくれない?

sa10 : きょーちょーせー?何、それ、美味しいの?

re11 : お前なぁ…
       協調性って言うのは、俺みたいに空気読んで、

sa11 : あぁ、へたれってことね!

re12 : はぁ?!なんでそうなるんだよ!

sa12 : だって、レオン=(イコール)へたれ、でしょ?

re13 : 違う!!俺は断じてへたれじゃない!!

sa13 : もう、ムキにならないでよ、うーるーさーいー。

re14 : サリ―!

sa14 : はぁ…王女は全然へたれてないのにねぇ…

re15 : なんでそこで王女が出てくるんだよ?

sa15 : だって王女とレオン、似てるじゃない。

re16 : …まぁ、確かに似てる、けど…それは認めるけど…
       たまたまだろ?

sa16 : それにしても似てると思わない?
       あ、レオンと生き別れになったキョウダイだったりして!

re17 : まさか。なんで王家の人間と俺が生き別れにならなきゃいけないんだよ。
       大体、俺はサウンド家の人間だぞ?

sa17 : じょーだんよ、じょーだん。

to14 : じょーだん言って楽しそうなとこ悪いんだけど、さっき出した問題ひとつも出来てないよ?
       解答が埋まってないんだけど。

sa18 : げ、

re18 : トレニア先生…

to15 : 二人とも、今日の宿題、いつもの倍ね。

re19 : えー!!そんな!!

sa19 : オーボーだよ!!

to16 : はいはい、それじゃあ勉強の続き始めるよー。

 

 

【丘】

sa20 : はぁ、やっと宿題終わった…

re20 : ホント、トレニア先生の宿題、容赦ないんだもんな。

sa21 : でも、遊ぶ時間に間に合ってよかったね。

re21 : 二人でやったもんな、宿題。

sa22 : 頑張ったよね、私達!

re22 : そーだなー。まぁ、主に俺が、だけど…

sa23 : ん?何か言った?

re23 : いや、王女、遅いなぁ、って。

sa24 : そーだねー…お城抜け出すの大変なのかもね?

re24 : そりゃ大変だろうさ。

sa25 : …私、あぁいう所に憧れはするけど、住みたいとは思わないわ。

re25 : そうだな。

sa26 : 籠の中の鳥になりたくないもの。

re26 : まぁ、今の生活が一番幸せなのかもな。

sa27 : …レオン、じじくさい。

re27 : うっさい。あ…

sa28 : ん?あ、アイリスさん!!

ai17 : こんにちは、二人とも。

sa29 : こんにちは。

ai18 : あれ、お兄ちゃんは?

re28 : 宿題の採点中ですよ。

sa30 : 聞いてよ、アイリスさん!!トレニア先生ったら酷いの!
       ちょっとお話してただけでいつもの倍も宿題出したのよ!

ai19 : あらあら、それは大変だったわね…

sa31 : ホントだわ!あ、そういえば王女は?

ai20 : あ、そうだったわ。
       あのね、申し訳ないんだけど、王女、今日、来れなくなってしまったの。

re29 : え?

sa32 : どうして?まさか、お城抜け出してるのがばれて…!

ai21 : ううん、それはばれてないわ。
       実は、王女、昨日の夜、熱を出しちゃってね、今、寝込んでいるの。

re30 : え、大丈夫なんですか?

ai22 : ええ、王家専属の医師も看護師も優秀なのよ、大丈夫。

re31 : それじゃあ、アイリスさんも帰らなきゃいけないんじゃ…

ai23 : ええ。すぐに戻るわ。

sa33 : わざわざ伝えにきてくれたの?

ai24 : まだ寒いから、ずっとこの丘で待ってたら風邪引いちゃうもの。

re32 : ありがとうございます。

ai25 : 良いのよ。それじゃあ、お城に戻らなきゃ。またね、二人とも。

 

SE   足音

 

sa34 : 王女、熱出しちゃったのね…

re33 : サリ―には無縁の話だな。

sa35 : そうだねー…

re34 : 今のちょっと皮肉だったんだけど…

sa36 : 心配だねー…

re35 : そーだな。でも、ちょっと安心した。

sa37 : え?

re36 : 王女も俺と同じ普通の人なんだ、って。
       …まぁ、馬鹿は風邪引かないって言うくらいだから大丈夫だろうけど。

sa38 : よし、レオン、決めたわ!

re37 : …あ、やばい、嫌な予感…

sa39 : 王女のお見舞いに行きましょう!!

re38 : やっぱり…!!

 


【城内】


SE   窓の開閉音

 

sa40 : 侵入成功っ!

re39 : しー!サリ―、お前、馬鹿か!城に忍び込んでるなんてバレたら処刑もんなんだぞ!

sa41 : レオンの方が五月蠅いよ。

re40 : それより、馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけど、まさか犯罪にまで手を染めるなんて…

sa42 : 何よ、レオンだって来てるじゃない。

re41 : 俺はお目付け役。サリ―はドジ踏まないかフォローするの。

sa43 : そんなこと言って王女のこと心配なんでしょー?

re42 : 別に、そんなこと言ってないだろう。
       王女には王家専属のお医者さんとかアイリスさんとか他にもたくさんの人いるんだし、
       国の一流の薬師だっているんだからすぐに治るだろうし、

sa44 : ねぇ、レオン、知ってた?

re43 : なんだよ?

sa45 : レオンって照れ隠ししたり嘘吐くとき、いつもより喋るんだよね。

re44 : ……王女の部屋さっさと探して早く帰るぞ。

sa46 : はーい。

re45 : ストップ!!

sa47 : え?

re46 : 人がいる!こっちに隠れて!

sa48 : あ、うん!

 

SE    足音

 

A 01 : リンアン様の様子はどうだ?流行り病か?

B 01 : いや、ただの熱らしいぜ。

A 02 : それは良かった。あの元気な姿が見えないとなんか調子狂うんだよな。

B 02 : いつもお前、遊び相手させられてたもんな。

A 03 : まぁな。

B 03 : でも最近、リンアン様、部屋にこもること多くなってないか?

A 04 : 勉強だろ?大変だよな、第一王女も。

B 04 : そうだな…年の近い友達なんてここじゃ作れないしな。

A 05 : あぁ、でも…あの子がいたら…少しは変わってたかもな。

B 05 : あの子?

A 06 : ほら、リンアン様が生まれたと同時にサウンド家に行かれた…

B 06 : 男の子か。

A 07 : 女系王族ってだけで候補から外された上に身分まで変えられて、あの男の子も不幸だな。

B 07 : あ、サウンド家と言えば、この前、パーティーに来てたぞ。サウンド家の男の子。

A 08 : その子だな。あのリンアン様の双子の…

B 08 : しっ、それは城内でも言うことがタブーになってるトップシークレットだぞ。

A 09 : おっと、すまない。

B 09 : それより行こうぜ。そろそろ見回りの交代の時間だ。

 


SE   足音

 


re47 : サリ―…

sa49 : ……レ、オン…?

re48 : 今の、話って…

sa50 : レオン…

re49 : …帰ろう…

sa51 : …うん…

 

SE   窓の開閉音
SE   足音

 

【外の道】

 

re50 : サリ―、先に帰ってくれないかな?俺、ちょっと行きたいとこあるから。

sa52 : …うん、分かった。
       あまり遅くならないようにね?

re51 : あぁ、ありがとう。

 

SE   足音

 

【丘】

 

re52 : 女系王族だから何だって?
       生まれてすぐサウンド家に行った?
       どういうこと?
       双子?トップシークレット?
       俺は、サウンド家の子供じゃないってことか?
       俺は…俺は…リンアン=ミラー=アシュビッツの双子のキョウダイ…?
       分からない、分からない、分からない。
       誰もそんなこと教えてくれなかった。
       誰もそんなこと言ってくれなかった。
       ……俺は、捨てられたってことなの…?

 


【サウンド家】

sa53 : レオ―ン、レオ―ン!!

re53 : 何だよ、サリ―、朝っぱらから五月蠅いなぁ。
       今日はトレニア先生の授業もないだろう?

sa54 : あ、レオン、おっはよー。
       なんだ、顔色、良さそうだね。

re54 : は?

sa55 : この前、真っ青な顔してたから。

re55 : ……お前はいつも能天気だな。

sa56 : えへへ。

re56 : 褒めてない。

sa57 : あ、そうだ、それより、レオン、王女のとこに行こう?

re57 : え?

sa58 : ほら、この前お城に行った時、結局お見舞いできなかったじゃん?
       だから、お見舞いしに行こう!!

re58 : ヤダ。

sa59 : は?

re59 : だから、俺はこれから宿題すんの。
       行くならサリー一人で行けよ。

sa60 : …この前聞いた話、気にしてるの?

re60 : 別に…

sa61 : 気にしてるんじゃん。

re61 : ……仕方ないだろ。俺だって混乱してんだよ。
       知らなかった自分の情報、あんな形で知ることになって!!

sa62 : あのね、レオン…私には血の繋がったキョウダイいないから、よく分からないし、
       王家のこともよく分からないし、レオンの気持ちも分からない。
       でも、キョウダイって凄い絆があるってお母さんが言ってたよ?

re62 : 絆…?

sa63 : だって、そうでしょ?
       たまたま行ったパーティーでたまたま暇だった私達が、
       たまたま王女を見つけて、たまたま声掛けて、たまたまお友達になって……
       それって凄い偶然だよ!!きっとレオンと王女は会わなきゃいけなかったんだよ!!

re63 : あれ、サリ―って神様信じてたっけ?

sa64 : 信じるようになった。
       レオンと王女と出会ってね。

re64 : ……でも、俺は捨てられたんだぞ?

sa65 : 誰に?

re65 : …王家、に…

sa66 : でも、サウンド家が必要としたよ?

re66 : それは…

sa67 : レオンはいらない子だって育てられたの?

re67 : 違う…

sa68 : 知ってるもん。おじさんもおばさんもレオンのこと大好きで、
       レオンのこと必要としてるって。
       いつも見てたから知ってるよ。

re68 : サリ―……

sa69 : 羨ましいよ…私は…キョウダイいないから…

 

 

【丘】

 

re69 : キョウダイ、か…

to17 : やぁ、レオン。

re70 : トレニア先生。

to18 : 隣、良い?

re71 : どうぞ。

to19 : 良い天気だねー。

re72 : そうですね。

to20 : あ、風、気持ち良いねー。

re73 : そうですね。

to21 : レオン、何かあった?

re74 : そうです、ね…え?

to22 : ボクはレオンの先生だよ?すぐに分かるさ。
       ほら、何かあったって顔してる。

re75 : …先生、そこまで分かるならどうして俺を放っといてくれないの?

to23 : んー、きっと、ボクがレオンの先生だから、かな?
       …何か、嫌なことでもあった?
       サリ―と喧嘩した?

re76 : 違うよ。

to24 : それじゃあ、お父さんと喧嘩した?

re77 : 俺、そんな子供じゃないよ、先生。

to25 : んー、難しいなぁ…そうだな…それじゃあ、
       今まで知らなかったキョウダイの存在を初めて知っちゃってショック受けた、とか?

re78 : なんでそれを!!

to26 : しかもそれが王家で、キョウダイは第一王女のリンアン=ミラー=アシュビッツ様。
       とか?

re79 : せ、んせい…?
       まさか…知って、た?

to27 : うん、知ってました。

re80 : ど、して…それじゃあ、どうして何も言ってくれなかったんですか!!

to28 : それが国が決めたことだからだよ。
       女王様が決めたことは国が決めたこと。

re81 : 説明してよ、先生…俺は、…誰?

to29 : 君は…レオン=ミラー=アシュビッツ。
       リンアン=ミラー=アシュビッツ様の双子の弟だよ。
       元々この国は女王が治めてきたから、男の子が王族の直系にいちゃいけないって暗黙のルールがあるんだ。
       だから、女王様は君を孤児院に預けようとした…
       でも、サウンド家が名乗り出て引き取ったんだよ。
       それが事実。これが、この国のトップシークレット。

re82 : レオン=ミラー=アシュビッツ…

to30 : ボクの家は元々王家の教育係や家庭教師をしていた。
       だから、知ってる。君が、本当は王族の子供であることを…

re83 : そんな……

to31 : 知ってるから君の家庭教師に任命された。
       それが君の知らなかった真実だよ。

re84 : …そんな…
       俺は…今まで何も知らずに…何も知らずにあんな鳥籠に王女だけ残して…
       王女だけあんなに辛い思いしてたのか…

to32 : え…

re85 : 双子ってことは本当は一緒にいて、同じように苦しんだりしなきゃいけないはずなのに、
       王女を、彼女を一人ぼっちにしてた…

to33 : ふっ、あはははっ、レオン!君はやっぱりどこまでも優しい子だね!

re86 : 先生…?俺、結構真面目に俺の人生と向き合ってる最中なんだけど…

to34 : あぁ、うん、そうだね。でも、ゴメン、おかしくって!

re87 : は?

to35 : だって、普通、自分に隠し事されたら切れるだろう?
       なんで隠し事してたんだ!って。
       なのにレオンってば、リンアン王女の心配してるし、申し訳ないって思ってるんだから、なんかずれてるなぁ、って。

re88 : ずれてるって…トレニア先生に言われたくない…

to36 : あ、ちょっとそれ、どういう意味?

re89 : …俺ね、怒ってるよ。切れたよ。
       どうして俺に隠し事したのか、どうして俺を捨てたのか…
       でも、俺、その気持ちと同じくらい嬉しいんだ。

to37 : 嬉しい?

re90 : サリ―には言わないでよ。

to38 : うん、もちろん。

re91 : 俺ね、ずっとキョウダイいなかったでしょ?ずっと欲しかった…
       だから、嬉しい。キョウダイがいるって事実を知って。
       しかもそれが王女。

to39 : うん…

re92 : サリ―に言われたんだ。凄い偶然がたくさんあって王女と俺は出会って…それってすごい絆なんだって。
       考えたら確かに、って思っちゃった。
       だから、なんか、上手く言えないけど…俺、嬉しいんだ。
       でも、どっかで怒ってる。

to40 : レオン…

re93 : ねぇ、先生…俺、今、ぐちゃぐちゃなんだ。

to41 : ぐちゃぐちゃ?

re94 : 頭ん中、ぐちゃぐちゃ。
       嬉しいのに、よく分からないし、怒ってるのに、嬉しいし…

to42 : うん、そうだね…
       レオン。

re95 : 何?

to43 : きっと、それが正しいよ。
       そうやってぐちゃぐちゃして、たくさん考えて、悩んで、苦しんで、それでも前に進むのが正しいんだよ。

re96 : 答えが出なくても?

to44 : 答えが出なくても。
       きっとこれは答えのない問題なんだよ。だから、本当に難しい。
       だから、ボクにはその答えは教えられないし、分からない。
       レオンにしか分からない。

re97 : 何が正解なのかな…

to45 : それを探すのが君の役目だよ。

re98 : 先生…

to46 : なんだい?

re99 : 俺、王女と友達でいれる?

to47 : それも君次第、かな?

re100: 王女は知ってるのかな?俺とキョウダイだってこと。

to48 : きっと知らないだろうね…

re101: 王女も知ったらぐちゃぐちゃするのかな?

to49 : するかもしれないね。

re102: …それじゃあ、俺が側にいなきゃ。
       俺にはサリ―とトレニア先生がいてくれたけど、王女には誰もいない。

to50 : レオン…

re103: …トレニア先生、抱きつかないで、暑い。

to51 : 成長したね、レオン!!先生は嬉しいよ!!

re104: ちょっ、もう!!
       はぁ…トレニア先生、……ありがとう…

to52 : …うん。

 

 

 

 

to53 : さて、と。そろそろ帰ろうかな。
       明日のお勉強の準備しなきゃ。

re105: げ、簡単で良いよ?

to54 : うん、分かってるよ。
       ボクにとって教えるのが簡単なやつ、ね!

re106: 違う!!

to55 : あはは、それじゃあ、レオンも寒くなる前に帰りなよ?

re107: 分かってるよ。
       俺、そんな子供じゃないってば。

to56 : また明日。

re108: …また明日。

 

SE   足音

 


re109: 彼女はリンアン=ミラー=アシュビッツ…
       俺はレオン=ミラー=アシュビッツ。
       彼女が俺の唯一無二の家族だというのなら、
       俺は、何が出来るんだろう?何がしたいんだろう?
       彼女は俺に何をしてほしいんだろう?何をしてくれるんだろう?
       分からないことばかりで、俺の頭はぐちゃぐちゃでパンクしそう。
       でも、不思議なんだ。
       王女とキョウダイだって分かった時、どこかで受け入れちゃってた自分がいて、
       違和感なんか無かったんだ。
       きっとこれが運命だったんだね。俺と君が出会って、俺が真実を知って、俺が、……

 

【城・リンアンの部屋】

 

ri09 : あー、つまんない!!
       熱出してからぜんっぜん外出してないし、させてくれないし!!
       ひっきりなしにドクターとか来るんだもの。面倒だわ。
       …これじゃあ、……丘に行けない…
       サリ―に会えないわ…
       レオンの小言だって今じゃ笑って聞けるもの…


ri10 : 寂しいわ、二人とも…

 

 

SE   扉をノックする音

 


ri11 : どうぞ。(少しぶっきら棒に。ドクターだと思っている。)

 


SE   扉の開閉音

 


re110: 失礼します、王女様。

ri12 : え…

re111: 本日よりこちらで王女様の身の回りのお世話をすることになりました、レオン=サウンドです。

ri13 : レオン…?

sa70 : 王女ー!!熱は大丈夫ですか?もうホントに心配したんですよ!!
       心配し過ぎてお見舞いに来ようと思ってたら、レオンがお見舞いに行くくらいなら、
       お城に雇ってもらおう、って言い始めて…

ri14 : サリー…?

sa71 : えへへ、これからお願いしますね、王女!!

re112: サリ―、お世話するのはお前なんだからな?

sa72 : 分かってるよ、レオン。

ri15 : レオン…サリ―…!!
       うそ、ホントに?二人はこれからもここにいるってことなの?

re113: はい、お側におります。

sa73 : 何があろうと、ずっと、ね?

re114: 誰よりも何よりも近くに。

 

 

re115: そう、これが運命なら…全て全て受け入れてしまおう。
       王女と出会ったことも、王女と友達になったことも、俺が何も知らなかったことも、
       王女が俺のキョウダイだってことも。
       全部受け入れたら、急に…君が愛しくなったんだ。
       俺の唯一無二のキョウダイである君が…

 


sa74 : 王女、これからは毎日遊べますね!!

ri16 : ええ!!

 

re116: この笑顔を守ることがきっと俺の運命なんだ。
       確証なんてないけれど、この笑顔の側にいることでほら、こんなにもぐちゃぐちゃだった頭がスッキリした。
       王女、いや、リンアン…君は俺のキョウダイである限り…
       俺は君と君のその笑顔を守りたい、って…
       そう思ったのが、俺が彼女の召使いになったきっかけです。
       単純だけどね。

 

 

 


END